1 ユーロで家が買える

1 ユーロ!イタリアの家の叩き売り

古い歴史を背景に美しい自然に囲まれ、食べ物も美味しく温暖な気候に恵まれたイタリア。世界一ユネスコ遺産の登録が多い国に世界中の多くの人が旅行で訪れ、その魅力に圧倒されます。この美しいイタリアでたったの1ユーロ、エスプレッソ1杯の金額で家を買えるとしたら貴方はどうしますか?

1 Eurohouses.com

シチリア島のサレミ村で最初の1ユーロホームが売りに出されてから約14年。CNNを始め世界中のマスメディアのニュースに取り上げられ、イタリアの”1ユーロホーム”について聞かれた人も多いことでしょう。コロナ感染パンデミックの際為には売買は下火となっていましたが近年になって以前の購入活動が又活発になって来たとのこと。

1ユーロ物件の分布地図(1eurohouses.com)

ユーロホームは、主に南イタリアに散布し、シチリア島、カラブリア州、モリーゼ州、バジリカータ州 などに集中(地図参照)。多くの市町村では成功を収め、現在はマルケ州、アブルッツォ州、リグーリア州を含む25あまりの市町村がこのプログラムを通じて1ユーロホームを売りに出しています。

どうして1ユーロで家が売りに出されているのでしょうか? このプログラムに参加している市町村の共通点はこれらの市町村は全て僻地、しかも殆どが地震区域に位置していること、仕事と安全を求めて住民は村を去り、現在過疎化が深刻化していることです。多くの家は廃墟の状態のまま、老人だけが取り残され町全体がゴースト・タウン化しています。この問題に拍車をかけているのが廃墟同様の家を遺産として受け継ぐ子孫の減少傾向です。出生率がヨーロッパでは最も低いイタリア、子孫がいても殆どは過疎化した村に戻る気も、税金のかかる”不用品”を相続する気もないのので結局は多くの廃墟した家々をどう処分するのかと言う問題が市町村自治体の肩の重荷になっています。

この人口減少と家の廃墟化を防ぎ、長期的には地域の活性化を取り戻すために考え出されたのがこの1ユーロホームのイニシャティブ。しかも多くの購入者はB&Bやairbnbなどの運営を目的としているので過疎地域の観光地化と言う将来的にも嬉しい付加価値も示唆しているので各自治体では新入居者に大きな期待をかけているようです。ただ1ユーロと言ってもこれはシンボリックな宣伝文句で1ユーロホームを買う条件として住宅を期限内に修復を開始・終了すること、弁護士費用やその他は自費で払うことなど数多くの規定があります。購入希望者が多い物件は落札式になるので実際には1ユーロでなく数千ユーロの値段になるそうです。しかも弁護士費用、登録料、調査料、そして修復工事にかかる費用などを合わせると何万ユーロもの金額になるので実際にはかなりの出費に。

それでも超人気の1ユーロホーム。最近は”ローマの近くに1ユーロホームが!”とか”とうとうトスカーナ州にも1ユーロホームが登場!”と言った華やかな宣伝文句も見るようになりました。応募者は殆どが外国人で圧倒的に北アメリカの購入希望者が多く、イタリア人は殆どと言って良いほど皆無だそうです。家賃や住宅ローンの高騰に悩むイタリア人、それでも過疎化の進む地域へ移って就職難やその他のデメリットと対処するのは長期的に不利だと判断するのでしょう。

数ヶ月前のCNNの記事で読んだのですが、あるシチリアの村の1ユーロホーム購入者は80%が北アメリカ在住、よってシチリアの小さな村は”リトル・アメリカ”、つまりシチリアの”アメリカ村”になりかねないと述べていました。又、ある記事によると人口800人のトスカーナ州にある村の”1ユーロホーム”40軒に1万1千件もの応募が殺到、驚いた市長は即、新しい募集を中断したそうです。 

私が1ユーロ・ホームを買うかと言いますと答えは殆どのイタリア人と同じ、“Grazie, ma non mi interessa…”(ありがとう、でも興味ないわ”)。

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