水彩画を習い始める

古い筆を手にして

母が亡くなって1年が過ぎた。 母が遺したものを少しずつ整理し始めたとき、偶然、物置にしまってあった水彩画の箱を見つけた。 私の両親が1980年代後半にカナダで退職したとき、母は英語を学ぶためにELSに入学し、近くのシニアセンターの水彩画教室に登録した。 元気いっぱいの彼女は、いつもやってみたいと思っていた趣味に意欲を燃やしていたが、なかでもそれが水彩画だった。

私は好奇心と興奮が入り混じった気持ちで箱を開けた。中には乾燥した水彩絵の具のチューブ、絵の具の染みのついたパレット、絵筆の束、消しゴムやデッサン用の鉛筆などの道具が入っていた。蓋を開けると、突然、木製の絵の具箱が生き返った。プラスチックのパレットについた色の染みが、母が残していったものを私に引き継ぐように頼んでいるような気がした。

そこで私は木箱を近くの画材店に持って行き、竹の寿司ローラーに丁寧に束ねられた干からびた絵具のチューブや絵筆をまだ使えるかどうか尋ねた。

「乾燥した絵の具チューブは、ちょっと水を加えるだけでいいんだ。ああ、絵筆も......これはセーブルで、最近ではあまり見かけない、とても貴重なものです。あなたのお母さんがとても大切にしていたものです! あなたはラッキーね」

私は興奮しながら家に戻り、1987年に母と初めてトスカーナへ旅行したときの古いアルバムを即座に思い出した。 アルバムにはこう書いてあった:

トスカーナ地方の景色は心を和ませてくれる。なだらに続く丘、それを覆うオリーブの木の優しい色、そして点々と見えるオレンジ色の家々の屋根。。。。なんという色彩の調和だろう。このトスカーナ地方の農家を別荘にして、毎日散歩したり、絵を描いたり出来たら。。。。夢のような話である。

1987年、トスカーナ州ヴィンチでの古い鉛筆スケッチ

まあ、私が改装したのは農家ではなく一軒家だし、トスカーナの別荘でもなく、ウンブリアの古い家だ。 しかし、37年前にヴィンチで書き留めた夢に向かって、(曲がりくねってはいるが)正しい方向に歩んでいるようだ! もしかしたら、母が私に「夢を忘れないで、ウンブリアの美しい風景を描きなさい」とほのめかしているのかもしれない!

この秋、また新しいプロジェクトが始まる......。