イタリア料理は存在しない?
イタリア料理と聞くと”ピッツア”とか”パスタ”が代名詞のようですが実際には真の意味での”イタリア料理”は存在しません。なぜならイタリアの台所で作られる料理は全て各地方の郷土料理だからです。
イタリアの歴史は3千年にも渡りますが一つの国家として統一されたのは約160年前。それまではイタリアの各地域はそれぞれ外国支配の影響を受け、独特の言語、伝統や文化を大切に育ててきました。現在のイタリアは20の地域から成り立っていますがその伝統や歴史、文化は今でも健在で強く根付いています。特に食文化はその地域性を強く反映していて自分の住む地域でない地域の郷土料理はまるで外国料理と同様の扱い。地元のレストランのメニューには地域性のないポピュラーな料理を除き、地元地域外の料理は見つかりません(観光客対象のレストランのメニューは別ですが。。。)
例えばサルディニアの郷土料理、”パエリア・アルゲレーゼ”、サルデーニャ風パエリアです。カタロニアの文化の影響を受けながらもベースは米でなくクスクスを巨大にしたようなセモリナ粉のパスタ。サルデーニャの人達にとってパエリヤは生粋の伝統的な”サルデーニャ料理”であり、”パエリヤ・アルゲーレーゼ”と呼ばれています。
次の写真はシチリアの魚のクスクス、シチリアの大都市トラパーニの名物です。北アフリカの文化の影響を受けたこの魚のクスクスはどうみて見ても北アフリカ料理ですがトラパーニの人達にとっては純粋の”シチリア料理”、その名も”クスクス・トラパネーゼ”。
パエリヤやクスクスが”イタリア料理”と言われても殆どの人は首を傾げることでしょう。サルデーニャとシチリアの例は歴史の背景と共に極端な例かもしれませんが、実際にイタリアに真の”イタリア料理”は存在しないのです。イタリアで真のイタリア料理を食べるなら訪れる地域の郷土料理を食べることが原則。ロンバルディア州ならリゾット・ミラネーゼ、エミーリヤ・ロマーナ州ならトルテリーニのスープ、リグーリア州ならトロフィエ・アル・ペスト、ラッツイオ州ならパスタ・カルボナーラなど。
真の”イタリア料理”のルーツはスロー・フード、地元の食材を主にした伝統、文化、歴史に視野を置く郷土料理です。詳しくは Slow Food へ。
ベネチア郷土料理、たらのディップ、バッカラマンテカート
ピエモンテ州の郷土料理のひとつ、バーニャ・カウダ
先日、ローマの友人に日本の”イタリアン”を始めとするレストランや居酒屋のメニューに頻繁に登場する大人気のバーニャ・カウダの話をしたら”バーニャ・カウダ? 聞いたことがないわ。母によるとピエモンテ地方の人達が食べる料理だそうよ”との返事。
もしローマのレストランのメニューにバーニャ・カウダがあったら要注意。。。
Buon appetito !(ブオナッペティート)!